【東電株主代表訴訟】
東電株主代表訴訟とは
津波への安全対策を怠り福島第一原発事故を招いたとし「脱原発・東電株主運動」の株主らが中心となり、原告として旧経営陣5人に会社への22兆円の損害賠償を求めたものです。
東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は、2022年7月13日、勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の4人に対し、連帯して東電に対して13兆3210億円の支払いを命じる判決を出しました。
朝倉裁判長は、「7ヶ月かけて書きました。しっかり聞いてください」と、判決文を読み終わり静まりかえった法廷をぐるっと見渡し、「わかりましたか、もう一度繰り返します」と再び読んだ。
真っ当な司法の判断が下されたと、閉廷して帰る裁判官に原告席や傍聴席から自然に拍手が沸き起こった。
一審判決で認められたこと
①過酷事故を万が一にも防止すべき社会的・公益的義務
過酷事故が起きたら「住民に重大な危害を及ぼし、環境を汚染し、国土や国民全体に甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティーの崩壊や喪失を生じ、わが国の崩壊につながる」とし、原発設置者は、最新の知見をもち過酷事故を防止する社会的・公益的義務を負うとし、過酷事故を防止する善管注意義務を負うと責任を認めた。
②長期評価の信頼性を認めた
国の地震調査研究推進本部(推本)が2002年に発表した長期評価は、専門家集団による最高の知見であると認定した。
その見解に基づき東電設計が2008年に計算した最大15.7メートルの津波予測(明治三陸試計算結果)の信頼性も認定した。
③津波への安全対策を何も行わず先送りしたと認定
「長期評価」の信頼性を認めず、土木学会への再評価依頼の以後「津波への安全対策を何ら行なわず先送りした」ことは、安全意識や責任感が欠如していたと厳しく指摘、「著しく不合理で許されるものではない」とした。
津波対策を講じなかった取締役の「不作為」は任務懈怠(けたい:おこたること)があったと認めた。
④結果回避可能性を認めた
原発の重要な建屋や重要機器室へ津波が浸水しない「水密化」は、他の電力会社でも行われており、東電も実施することは可能(2年程度)で、実施していたら「重大事故を避けられる可能性は十分にあった」と認めた。